最近テレビでも歌舞伎役者さんのご活躍をよく目にしますが、その中でも人気の「市川猿之助さん」
テレビドラマでは「クセが強くて、策略をめぐらす怖い人」の役が多いような気もします(笑)が、同じ「市川」で同じ歌舞伎役者で同じく人気の高い「市川海老蔵さん」とはご家族なんでしょうか?
世襲制の残る歌舞伎界ですので親戚なりの親類縁者だとは思うのですが、そんな話を聞いたことが無かったので、今回調べてみました!
そしたら複雑すぎて頭がパンク(笑)しそうになりましたので、出来るだけ簡略化して分かりやすくお伝えします!
市川猿之助さんの家系図
ご存知の方も多いと思いますが、我々の知っている歌舞伎役者さんの名前は芸名であり、実力のある役者さんのお名前は代々受け継がれています。
今の市川猿之助さんは四代目、市川海老蔵さんは十一代目です。
そして家系図では初代市川猿之助から、現在の四代目市川猿之助さんまで分かるようになっています。
これを見ればお分かりのように、四代目市川猿之助さんのご本名は喜熨斗 孝彦(きのし たかひこ)さんです。かなり珍しい苗字ですので、本名の方が芸名みたいですね。
同じ「市川」でも、市川海老蔵さんのお名前はありませんが、香川照之さん(九代目 市川中車:いちかわ ちゅうしゃ)のお名前があり、父方の従兄であることが分かります。
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ちなみに十一代目市川海老蔵さんのご本名は堀越寶世(ほりこし たかとし)さんです。
つまり、同じ市川でも血縁関係があるとは限りません。本来「市川」は一門を表す名前であって「家系」とは関係ありませんが、芸を継承するために長の実子や養子が一門の名前を継承しています。
そして、ややこしいことに市川猿之助さんの「市川一門」と市川海老蔵さんの「市川一門」は違う「市川一門」として認識されています。
さてさて、それはなぜなのでしょうか?
ちなみに、市川猿之助さんと香川照之さんはテレビで共演されることも多く、歌舞伎役者・俳優とそれぞれの立場からお互いアドバイスするなど、お二人の仲は良好なご様子です。
猿之助さんと海老蔵さん 同じ「市川」何が違うの?
歌舞伎界において、市川海老蔵さんは「市川宗家」とも呼ばれ、市川猿之助さんの「市川」と違う「市川」として認識されています。いったい何が違うのでしょうか?
それは「屋号」です。
屋号とは、個人事業者が使用する仕事上で使っている名前のことで、いわゆる「ペンネーム」や「事業所名」「店名」なども屋号に当たります。
歌舞伎俳優が「屋号」を使うようになったのには江戸時代からで、江戸時代の身分制度では立場のなかった「役者」が商売を始めて「商人」として立場を得たのが始まりのようです。
歌舞伎役者さんの屋号を分かりやすく説明するなら、「所属事務所」みたいなものでしょうか?
歌舞伎界の主な屋号
ここでは伝統的な屋号と、その役者さんを少しお伝えします。
- 成田屋(なりたや) 市川團十郎・市川海老蔵
- 音羽屋(おとわや) 尾上菊五郎・尾上菊之助
- 高麗屋(こうらいや) 松本幸四郎・松本染五郎
- 澤瀉屋(おもだかや) 市川猿翁・市川猿之助・市川中車(香川照之)
- 松嶋屋(まつしまや) 片岡仁左衛門・片岡愛之助
- 中村屋(なかむらや) 中村勘三郎・中村勘九郎
つまり、「屋号:澤瀉屋」の「芸名:市川猿之助」といった感じです。
ちなみに、屋号にも格式や序列があり、市川海老蔵さんの「成田屋」の屋号が一番歴史が古く、格式が一番高いとされているようです。
屋号ごとに得意とする演目があり、
- 成田屋:「荒事」と言われる荒々しく豪快な伝統的演舞
- 澤瀉屋:「早変わり」や「スーパー歌舞伎」など新しいことに挑戦する演舞
といった特徴があるそうです。
しかし、なぜ同じ「市川」なのに違う「屋号」があり、「市川宗家」と呼ばれたりするのでしょうか?
同じ市川なのに、「屋号」が違う理由
歌舞伎界の「屋号」は「のれん」に当たり、主人が認めた人に「のれん分け」をするイメージです。
なので、同じ「市川一門」でも主人が認めない限りは同じ屋号を名乗ることは出来ませんし、「市川」を名乗らない弟子でも主人が認めれば「屋号」を名乗ることが出来たりします。
つまり、同じ「市川」なのに屋号が違う理由は簡単で、市川一門だった初代の市川猿之助さんが「成田屋」のれんを貰わず、自分で新しいのれん(屋号)を作ったためです。
今風に例えるなら、大手の老舗料亭「成田屋」で修行していた「初代市川猿之助」が独立して、新しい小料理屋「澤瀉屋」を作ったら、その小料理屋もやがて大きな料亭となり今に続いている。と言った感じです。
歌舞伎を好きな人が読んだら怒られるかも知れませんが、簡単に説明するとこんな感じかと思います(笑)
そして、お二人の関係を分かりにくくしているもう一つの要因が「宗家」という存在にあります。
市川猿之助さんを詳しく知りたい方はこちらもチェック!!
歌舞伎界における宗家とは
歌舞伎界の「宗家」とは個人の称号であって「家系」のことではありません。そして、「宗家」は「のれん分け」の権限を持っている唯一の人物でもあります。
「成田屋」では「市川團十郎」の名前、もしくはその芸を受け継いだ人物を「市川宗家」と呼び、今は市川海老蔵さんが宗家と呼ばれます。
その為、海老蔵さんの息子さんの勸玄くんは厳密には「宗家」とは呼ばないそうです。
しかし、世襲制が強く残る歌舞伎界、最後は「宗家」を継ぐでしょ。と言うことで「宗家」と呼ばれることもあるようです。
そして澤瀉屋の宗家は「市川猿之助」と「市川段四郎」の二枚看板とのことですので、市川猿之助さんは「澤瀉屋宗家」と呼ばれます。
格式が高く、市川一門の源流である「成田屋」の宗家を「市川宗家」と呼び、澤瀉屋の市川と区別しているのです。
ちなみに、「成田屋」と「澤瀉屋」はあんまり仲が良くないようです。原因は昔々に「澤瀉屋」が筋を通さずに好き勝手やったから、さすがの成田屋も怒った。」見たいです(笑)
今はそれそれなりに関係改善がされているようですが、昔の因縁は簡単には解決しないようです。
まとめ
- 市川猿之助さんと市川海老蔵さんに血縁関係はない。
- 同じ「市川」でも「屋号」が違えば別の「市川」
- 市川猿之助さんは「澤瀉屋」
- 市川海老蔵さんは「成田屋」
- 「屋号」は「のれん」と同じで、主が認めれば「のれん分け」される
- 「のれん分け」の権限がある人を「宗家」と呼ぶ
- 歌舞伎の世界は複雑
なかなか奥深く、詳細がつかめない歌舞伎界(笑)
市川猿之助さんと市川海老蔵さんに血縁関係は無いと書きましたが、遡れは親類縁者であることが分かります。
実は歌舞伎界の有名な一門は、結婚や養子縁組で「まるっと親類縁者」なんだそうです!
そんな歌舞伎界で異彩を放つ市川猿之助さんですが、独身でお子さんもいらっしゃらないとのこと。
世襲制の歌舞伎界において今後の澤瀉屋がどうなるのか、おせっかいにも心配しながらこれからもご活躍を拝見させていただこうと思います(笑)